考えないヒト - ケータイ依存で退化した日本人
考えないヒト - ケータイ依存で退化した日本人 (中公新書 (1805))
正高 信男
●内容は一見の価値はあり程度
話題になっていたので私も購入し読んでみましたが、とてもシニカルな内容で現代への
アンチテーゼとしての内容が見て取れますが、おそらく20代以下の世代への警鐘として
しか価値のある内容ではないと思いました。
少なくともポケベルを持っていた世代の私にはまったく価値のある内容の本だとは思いま
せんでした。
●現代人に対する警告
筆者は、IT化によるコミュニケーションの変化によって、日本人が「サル化」していると説く。
独自の視点で、非常に興味深い。筆者も述べる通り、極論も多い(言い訳も)が、我々の
気づかないような視点で警告をしてくれているという意味で示唆的な本であると思われる。
●これを読む1人1人の反応も、著者から「観察」されてますよ!
「話題になっているから・・・」と、この書を手にとってぱらぱらっとめくり、「ナニ、人間がサル
扱いされている。しかも今の若い世代の行動がとてもネガティブ視され、決め付けをして
いる! もっと説得力のあるモノ書けよ!」と憤る・・・
この書にネガティブな感じを持たれた方のなかには、案外、こういった反応をされた方が少な
くないのではないか・・・
と想像します。
しかし、この書の狙いは、ズバリ、”人間としての”読者に考えさせること/考えるキッカケ
を持ってもらうこと ではないか、と思われます。
そのため、推測に基づく決め付け的な記述も”あえて”著者は行っていますし、それが”さし
て害になることもあるまい”とも「はじめに」で述べているところです。
著者としては、この書がどういう議論を巻き起こすかを楽しみにされているのではないでしょうか。
そして、この書を叩き台として、様々な議論が巻き起こっている状況に、一定程度安心されてい
ると共に、”反射的な否定反応”(ex.「学者としてもっとまともなものを!」「問題意識が低い!」
etc.)に対しては、「おいおい、もうちょっとどういう狙いでこの書をこういう内容で上梓したのか、
考えてくれよ・・・。学術書で学問的にカッチリやるやり方もあるし、マンガもあるし、、、といったな
かで、あえてこの手法で挑んだのに・・・」と思っていらっしゃるのではないかと推察します。
著者はサルを長年の研究対象にしてきた方です。当然、これを読む読者一人一人も”研究対象”
にされていることを忘れずに!
この書に関しては、ぱっと思いついた「感想」に、ぜひ反対方向からの問いかけをする、という
人間の内面的作業を欠かさないほうがいいのではないか・・・と感じる次第です。
●確かに面白い、だけど・・
勉強になります。私自身が好きな分野だったからかもしれませんが、書かれている内容も
面白い。筆者がどういう経緯でこのように考えるようになったのか、よく分かる。タイトルにも
なるほど惹かれる。
しかし、読んでいてすこし、筆者の思い込みと思われる部分が入る。納得できる部分は確か
にうなずけるが、少し強引に意見を押し付けている面も。それだけの事実で、これだけの情報
でそこまで考えるのはどうだろう?たまにそんなことを思ってしまう。
著者が考える一つの意見として読むなら参考になるが、いまいち説得力に欠ける作品でもある。
●面白そうなテーマはあるのですが・・・
前作もそうでしたが、印象は「現代の日本の若者に違和感、危機感を覚える大人が、自分の
知識を用いて納得のいく説明を組み立てる努力をしている」でしょうか。様々な「目に付くこと」
をとりあげているせいか、まとまりが少し散漫になっている印象は否めませんでした。
日本の若者についてだけでなく、世界各国、各世代、ともう少し対象を広げて評価・検討され
てから文化論を開陳して下さってもよかったのではないでしょうか。学生さんのテーマになり
そうなアイデアとしてみると面白そうなのがいっぱい入っておりますね。
著者は謙虚な気持ちで書かれたのかもしれませんが、前書きでいきなり「趣味でしている
作業」「宝くじでも買ったつもりで」と書かれてしまわれるのでは、読むほうは真面目な本と
しては読みづらくなります。
新書の中には、一般の人にもわかりやすいがとても丁寧に論じられている素晴らしいもの
があるので、期待して開くのですが。。。そういう(趣味とか宝くじとかの)内容でテレビの
教育番組も作られたのかと思うと、残念ですがそちらも疑ってしまいたくなります。
それははずれた宝くじより残念かもしれません。